先住民最後のワニレスラーが引退

米フロリダ南部エバーグレーズでは、ワニの口をこじ開け、80本の光る歯のすぐ近くまで危険なほど顔を近づける体格のいいアメリカ先住民の男性と「Adventures Await(冒険が君を待っている)」と書かれた看板をよく目にするそうだ。
この男性の名前は、ロッキー・ジム・ジュニア。先住民ミコスキーの一人で、31年間ワニを相手にレスリングショーを行い、多くの観客を楽しませてきたという。
だが2015年最後の日曜日、100年の伝統を誇るワニ・レスリングの最後の後継者であるジムさんは引退を決意した。約600人いるミコスキーの中には今のところ後継者はいないそうだ。
同日に行われたショーで、ジムさんはワニに手を噛まれ7か所に傷を負ってしまった。幸運にも手を噛みちぎられることはなかったが、これを機にジムさんは引退を決めたという。
ワニ・レスリングはアメリカ先住民の伝統とされているそうだ。ただ、この伝統が今廃れつつあるという。背景には動物保護団体からの批判や、カジノ事業の方が先住民コミュニティーにより多くの現金収入をもたらすという事実、若い世代が次第に現実社会で仕事を求めるようになっていることなどが挙げられるという。
ミコスキーと歴史的なつながりがある、人口2000人前後の先住民セミノールの中に、ワニレスラーを続けている人が何人かいるそうだ。作家で人類学者のブレンド・ワイズマン氏によると、こうした人々は「観光客誘致のためではなく、セミノール文化の伝統を継承していく手段として、続けることを非常に慎重に選んだ」という。
常にン危険と隣り合わせのワニレスラーの後継者は志願者が少なそうだ。いずれ廃れてしまっても仕方のないことなのかもしれない。